ワイズトレーディング

環境事業

カシナガトラップ

暮らしと農業・林業、自然環境を守る

カシナガトラップ

ナラ枯れ(樹木の枯れ)を防ぎ、
森林を守ります。

ナラ枯れの原因である
カシノナガキクイムシを捕獲します。

PRODUCT FEATURES
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ナラ枯れとは

ナラ枯れとは、カシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)が,樹木に集中的な攻撃(マスアタック)を加えることで樹木が枯れる被害です。カシナガトラップは、カシナガの穿入を受けても生き残った穿入(せんにゅう)生存(せいぞん)木(ぼく)を林内に増やすことで、森を面的に守るための道具です。

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カシナガトラップのしくみ
その1
カシナガは,雄が幹に掘った穴(穿入孔(せんにゅうこう))から集合フェロモンを発散し、仲間(雌と雄)を誘引する。嗅覚と飛翔力が優れているため、遠くから集まってくるが、視力が弱く歩行が苦手である。
その2
カシナガトラップを設置すると、ペットボトルに入れたエタノール(食品添加物のアマノールを推奨)によって雄が誘引され、その一部がトラップ設置木に穿入して集合フェロモンを発散する。集合フェロモンに誘引されて飛来した成虫の多くは、透明の漏斗に衝突して捕虫部の黒色ボトルへと落下する。カシナガは正の走光性があるため、透明ボトルへと移動し、エタノール入りのペットボトルに落下する。捕獲虫はエタノールに浸かって短時間で死亡し、腐敗しない。
その3
カシナガは,5月以降に木から脱出するが、6月以前にカシナガの集中攻撃(1日で千以上の穿入孔が掘られる)を受け始めた木が枯れる。カシナガトラップ設置木は、飛来したカシナガの多くがトラップで捕獲され、集中攻撃を受けにくくなり、枯死が防止できる。
その4
カシナガの穿入を受けても枯れなかった穿入生存木は、幹内部が黒褐色に変色し、カシナガが再び穿入しても繁殖が困難であり、枯れにくい。このため、カシナガトラップの設置を3年ほど継続すれば、森全体にカシナガを殺す穿入生存木が増え、ナラ枯れが発生しにくい森に誘導できる。
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カシナガトラップを用いた防除法の特徴

カシナガの穿入を受けた木のうち半数程度は穿入生存木になる。穿入生存木に穿入したカシナガは、木の抵抗(樹液)によって死亡する。一方、穿入を受けて枯れた木ではカシナガが繁殖に成功し、育った子供達が翌年の被害を起こす。カシナガトラップを用いた防除法は、木に加勢することで被害を抑える方法である。自然の力を活かした薬剤に頼らない安全な防除法であり、重労働もない。

ナラ枯れ対策で最も経費がかかるのは枯死木の処理であり、その作業には危険も伴う。防除法の多くは「枯死本数を減らす」ことを目的としているが、カシナガトラップは「枯死本数ゼロ」を目的にしている。カシナガトラップを用いた防除法の最大の特徴は、枯死木の発生を抑えることで、枯死木の処理に必要な経費が削減でき、トータルの経費が抑えられることである。

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設置方法

カシナガは明るい場所に飛来しやすいため、トラップ設置木の半径2m以内の下草や灌木を除去する。これにより、トラップへの枝葉の落下も防止できる。 漏斗を25個連結し,ビニール紐とガンタッカーで幹に固定する。25個を連結したまま、その中央部を持ち上げると両側が垂れ下がって破損する可能性があるため、8個程度ずつ連結して運搬する

ペットボトル内への雨水の侵入を防ぐため、捕虫部は、根元から30cmほど離れた位置に10度以上傾けて設置する。カシナガは幹の下部への飛来数が多いことから、できるだけ下部にセットするため、小型ペットボトル(280ml以下)を利用し、土を掘って設置する。垂直に取り付けたり、傾きが大きすぎて排水口が詰まるとエタノールに雨水が混入する。エタノールに雨水が混入すると、カシナガが捕れないだけでなく、エタノールが再利用できなくなるので、雨水が混入している場合は必ず付け替える。

設置方法の善し悪しが,防除の成否に直結する。ガンタッカーで紐を止める場合、1箇所をクロスさせて確実に留める。紐が,カシナガの飛翔の邪魔をするので、1樹に使う紐はできるだけ短くする(3基×3箇所×20cm=1.8mで十分)。安価なガンタッカーを使ったり、非力な人がガンタッカーで留める作業を実施するとトラップが外れやすくなる。

カシナガの飛翔の邪魔になる下草、灌木,ツル植物はこまめに除去する。漏斗に落葉などのゴミが溜まったり、トラップが外れると、捕獲効率が低下して木に穿入するカシナガが多くなり、木が枯れる。汚れが酷い場合、連結した漏斗をばらして、タオル(雨水が混入したエタノールに浸けたタオル)で掃除する。捕虫部の底蓋も、土が溜まると捕獲効率が低下するので、目詰まりしている場合は除去する。

イラスト図 カシナガトラップの設置場
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カシナガトラップを使った防除の進め方
4月上旬まで
(カシナガの脱出阻止)
枯死木や、大量のフラス(虫糞と木屑が混じった粉)を排出している穿入生存木からは多数のカシナガが脱出するため、伐倒処理(伐倒くん蒸やチップ化など)する。枯死本数が多い場合、全てを伐倒処理するのは困難であり、全てが処理できたとしても、根元からの脱出は完全には阻止できない。とくに、前年に枯れた木を6月中旬以降に伐倒処理しても、カシナガが脱出した後なので意味がない。
4月中旬まで
(トラップ設置木の選木)
カシナガは、繁殖に適した木が多い場所に飛来しやすいため、ブナ科樹木が多い場所に設置する(針葉樹が多い場所には設置しない)。平地や山頂は、カシナガが素通りしやすいため、山復の見晴らしが良い場所での設置が有効。

トラップ設置木は、防除範囲内にまんべんなく配置し(互いの距離を5m以上離す)、前年に枯れた木の近くに配置する。カシナガは明るい場所にある大径木に飛来しやすいため、そのような木に優先的に設置する。カシナガは,木に飛来ても直ぐに幹に着地せず、幹周辺をフォバリングする。カシナガトラップは、この習性を利用した捕獲法であるため、カシナガがフォバリングしやすい木(幹周辺に十分な空間がある木)に設置する。周辺に灌木などが存在すると、カシナガはフォバリングせずに地際部に着地して穿入するため、カシナガトラップでの捕獲数が減るだけでなく、トラップ設置木も枯れやすくなる。100ha以上の大規模な防除を実施する場合、トラップ設置木の互いの距離は20m以上とする。また、道路沿いの木だけにトラップを設置すれば、設置やメンテナンス,虫の回収などが容易になる。

枯れにくい樹種に設置する。例えば、ミズナラとコナラの混交林ではコナラに,コナラとシイ・カシ類の混交林ではシイ・カシ類に設置する。穿入生存木のうち、フラス排出量が少ない木や、樹液を流出している木は、カシナガが飛来しやすく枯れにくいため、このような木に優先的に設置する。穿入を受けていない木は、新たな穿入を受けると枯れやすいため、穿入生存木と無穿入木が隣接していれば、穿入生存木のほうにトラップを設置する。

カシナガの飛来方向を考慮して設置する。例えば、道沿いに小さな木があり、道から離れた奥に大きな木がある場合、道沿いの小さな木に設置したほうが効果的である。なぜなら、道から離れた木にトラップを設置した場合、その木にめがけて飛翔するカシナガは、道沿いの木にも穿入してフェロモンを発散してしまう。すると、トラップ設置木への飛来数が減ってしまう。

枯死木や大量のフラスを排出している穿入生存木には設置しない(カシナガが繁殖に使った木の内部は黒褐色に変色しており、繁殖に使えないため,カシナガが飛来しない)。ビニール被覆などでカシナガの穿入を防いだ木には設置しない(雄が穿入できないのでフェロモンが発散されず,カシナガを誘引しない)。直立した単幹の木に設置すると効率的である(根曲がりや株立ちで、トラップが設置しにくい木にはなるべく設置しない)。
4月下旬まで
(ビニール被覆やメイカコート塗布の併用)
カシナガトラップ設置木の周辺木は,カシナガの穿入を受けやすいため、ビニール被覆またはメイカコート塗布して穿入を防止する。周辺木にビニール被覆すれば、その木は穿入を受けず、フェロモンの発散もないことから、カシナガはトラップ設置木に集まり、捕獲数が増える。

ただし、フラス排出量が少ない穿入生存木にビニール被覆してはならない。フラス排出量が少ない穿入生存木からの脱出数は少なく、このような木にビニール被覆することは逆効果になる。カシナガの弱点は、穿入生存木に穿入して死亡することである。穿入生存木にビニール被覆すると,その穿入生存木に穿入して死亡するはずだったカシナガを救うことになり、被害が拡大する。穿入生存木からの脱出を防ぐためにビニール被覆が実施されるが、ビニール被覆しても脱出は完全には阻止できない。ビニール被覆した穿入生存木は,脱出虫によって再穿入(ビニールによって閉じこめられた成虫が同じ木に穿入)され、枯れることも多い。
5月上旬まで
(カシナガトラップの設置)
トラップ設置はカシナガ脱出開始前に実施することが最も重要である。集合フェロモンの誘引力はエタノールよりも強いため、トラップ設置木以外に集合フェロモンを発散する木(カシナガが穿入した木)が発生すれば、トラップ設置木での捕獲数が激減する。また,既にマスアタックを受けている木に設置しても、その木は枯れてしまう。

トラップ設置数は、1樹あたり3基とする。トラップ設置木が枯れるのを恐れて1樹に4基以上を設置する現場もあるが、トラップあたりの捕獲数が減るだけでなく、カシナガがフォバリングするスペースがなくなり木が枯れやすくなる。トラップ設置数を増やすよりも、幹下部をシート被覆したほうが効率的である。トラップ設置木が激しい穿孔を受けて大量のフラスを排出している場合、放置すると枯死するのでシート被覆する。なお、殺虫剤(MEP)散布は有効であるが、これはマスアタックを防ぐ方法であるため、トラップ設置木がマスアタックを受けた後から殺虫剤を散布しても功を奏しない。トラップ設置木が激しい穿入を受けている場合は、カシナガがフォバリングできるスペースの確保(トラップ設置木周辺の伐開)が必要である。

トラップ設置数は現場に応じて決定する。ちなみに、宝が池公園(100ha)では50本に150基を設置して52万頭を、船岡山(8ha)では9本に27基を設置して13万頭を、石清水八幡宮(12ha)では25本に68基を設置して65万頭を,浄瑠璃寺(3ha)では21本に63基を設置して69万頭を捕獲して被害を抑えた。川西市黒川では、斜面中腹の6本に18基が設置され、周辺木をビニール被覆することで46万頭以上が捕獲され、広範囲の被害を抑えた。鈴鹿青少年の森(50ha)では3本に9基が設置され数万頭が捕獲された結果、トラップ設置木の180m以内では新たな枯死木は発生しなかったが、森全体の枯死本数は18本から35本に倍増した。明治神宮(70ha)では15本に45基が設置され3万頭以上が捕獲されたが、森全体の被害を完全に抑えることはできなかった。これらを参考に設置数を決定する。
5月中旬~
9月下旬
(捕獲虫の計数)
捕獲虫の回収とトラップの掃除は5中旬に開始し、2週間に1を目安に実施する。1基のトラップに2本のペットボトルを準備する。エタノール(100ml)を入れたペットボトルを買物カゴに入れて現場に持ち込み、トラップに取り付けたペットボトル(捕獲虫が入ったペットボトル)と交換する。

トラップ設置木はカシナガの穿入を受けるが、穿入孔からはフラスは排出されず、樹液が流出する場合が多い。こうした樹液にハチが群がることがあるが、そのような状態の木は枯れないので、危険を冒してペットボトルを交換する必要はない。
※失敗例
(カシナガトラップを用いた防除の失敗例)
カシナガトラップの仕組みを理解せずに(この説明書を読まずに)設置した場合、設置方法が間違っていることが多い。また、設置時期が遅れる場合も多く、設置時期が遅いと防除に失敗する。また、無理な計画を立て、捕獲を中断する場合もある。関係者全員が、カシナガの生態やカシナガトラップの原理を理解している現場で防除に成功するのは、臨機応変に問題に対処できるからである。

勉強熱心なボランティアがカシナガトラップを使うと成果が得られるが、役所が実施する防除事業では成功例は少ない。防除事業を始めた担当者はカシナガトラップを理解していても、野外作業が業者に委託され、引き継いだ担当者が理解していなければ、下草や灌木の除去が不十分になったり、トラップの掃除が雑になったり、エタノールに水が混入するなどして、1基あたりの捕獲数が2千頭以下になる。激害地であれば、1基あたり5千頭以上は捕獲できる。捕獲数が少ない場合は、どこかに問題がある。

京都府での防除成功例では、地元の人材を活用していた。作業者が現場から近いことは、作業が効率的なだけでなく、作業者に「地元の慣れ親しんだ森を守りたい」という熱意があり、それが被害を抑えることにつながっている。
販売価格オープン価格
製品スペック
名称
カシナガトラップ
材質
寸法
重量
単位
製造場所
品質保証
6ヶ月
お電話でのお問い合わせ
075-254-3833

平日9時〜12時/13時〜17時
(土日祝を除く)

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